いつか柔術を教えたい。そんな考えで日々練習している人も少なくないはずです。しかし問題はいつになったら教えるべきなのか、ということです。果たして自分は人に教えるほどの柔術家なのか、といった悩みを抱えている人は「柔術を教える」について今一度考えてみましょう。
読者さんからの質問です。ありがとうございます。
こんにちは。リアルな意見が聞けるのでいつもこのブログを参考にしています。今日は質問があります。私は地方のサークルで柔術を練習しています。そこには茶帯の代表がいるのですが、多忙のため欠席することが多く、仕方なく青帯の自分が代わりに指導することが多いです。
連盟の規定ではインストラクターは紫帯からと定めていますし、たいして強くもない自分が指導していいものかどうか分かりません。指導するのも苦手で、正しく教えられているか自信もないです。柔術マンさんは青帯が指導することについてどのような考えを持っていますか。お返事いただけたら助かります。
すごくいい質問ですね。経験豊富な先生がいない環境では誰が指導したらいいのか、といった切実な悩みだと思います。では質問に答えていきたいと思います。
そもそもブラジリアン柔術って何帯から教えていいの?
日本ブラジリアン柔術連盟公式サイトで「帯制度」のページを見てみると、こんなことが書かれています。
第五章 指導者と監督者
いくつかの国々においては、茶帯以下の指導者に対しても、生徒へ帯を認定する権利をIBJJFは認めている。こういった立場の指導者達は、公式には監督者として見なされる。
これらの茶帯または紫帯の指導者(監督者)は生徒に帯を認定することが出来、茶帯の指導者の場合は紫帯までの認定を、紫帯の指導者の場合は青帯までの認定を行うことが出来る。
要するに、いくつかの国では茶帯以下の人でも指導して、許可される範囲なら帯を出してもいいよ、ということです。ただ、このいくつかの国がどの国を指しているのかは曖昧ですね。
そこで国際ブラジリアン柔術連盟の帯の昇段規定を読んでみます。第6章にこんな記述があります。
In countries or regions where there are not enough black belts for the development of the sport, IBJJF will accept purple belt and brown belt athletes to sign as instructors.
柔術の発展のために十分な黒帯がいない国や地域では、IBJJF(国際ブラジリアン柔術連盟)は紫帯と茶帯の選手をインストラクターとして登録することを受け入れる。
基本同じことが書いてありますが、「十分な黒帯がいない国や地域では」といった説明が加えられています。これらの記述から、黒帯がいなければ紫帯や茶帯からでもインストラクターとして認められている、といった認識が一般的に広まっていますよね。
ただし、どちらの記述もあくまでも「帯」に関するもので「指導」に関するものではありません。青帯は教えてはいけない、とはどこにも書いてないので、団体や指導者として正式に登録するというのでなければ、指導するだけなら実際のところ青帯でも問題ないはずです。
ブラジリアン柔術を教えるのに自信が持てない人が知るべきこと
もちろん黒帯が教えることができればそれが理想ですが、環境によってはなかなかそういうわけにはいきません。そもそも一昔前まで日本でも青帯や紫帯が教えるのが普通、という時代がありました。今でも海外の柔術後進国では紫帯、もしくは青帯が指導している道場も普通にあります。
今でこそ有名な日本柔術界の先駆者の方々だって、ほとんどの人が青帯時代からほかの生徒たちに指導してきたはずです。要するに多くの人たちが通ってきた道であり、環境によっては仕方がないことなのです。
また、教えれば教えるほど指導も上手くなるし、自分でも様々なことに気づく機会が増えるので、早くから指導することは決して悪いことじゃないです。
青帯が柔術を教えるメリット
青帯の先生と黒帯の先生を比べたらどうしてもあらゆる面で黒帯の先生に軍配が上がるでしょう。そんな中で一つメリットを挙げるとしたら、青帯は黒帯ほど「知の呪縛」にかかっていない、ということがあります。
知の呪縛とは、「自分が知っていることは相手も当然分かるだろう」といった心理状態で、これにかかると「相手ができないことが理解できない」といった現象が起こります。つまり初心者の気持ちが全く分からないという心境です。
あなたの近くにいませんか、初めて教わったことなのに「なんでそんなことができないんだ?」などと言い出す先輩や先生たちが。
経験を重ね、技術が向上すると、柔術の様々な動作が簡単にできるようになるため、人はついつい苦労を重ねて、反復練習をしたおかげで、やっとそれらの動きができるようになった経緯を忘れてしまいがちになります。
すると、相手にもいきなり自分と同じレベルを求めてしまうのです。指導者がそうなってしまったら、生徒たちは気の毒ですよね。
一方で青帯の先生なら、つい最近まで白帯だったので初心者の気持ちが、より理解できるはずです。教えられることは限られているかもしれない。実力もまだまだかもしれない。それでも初心者の気持ちに立って自分が教えられることを教え、柔術の楽しさを伝えることができたら、十分に大切な役割を果たしているはずです。指導、頑張ってくださいね。