ブラジリアン柔術を始める前に柔道、あるいは他の格闘技をしていたという人も少なくないはずです。そこで、そういった人たちが柔術に順応していくうえで立ちはだかる悩みや問題について考えていきましょう。
読者の方からこんな質問を受けました。ありがとうございます。
はじめまして、最近柔術をはじめた者です。私は柔道と合気道を長年やってきて、それなりの実力だと自惚れていましたが、柔術の道場へお邪魔した際に見事にこてんぱんにやられてしまい、それから柔術を習うようになりました。
柔道を長年やってきた経験から、投げ=一本が身に着いてしまっていて、そこから技を連携させて相手を極めることが苦手です。抑え込みにまで持っていくことはできるのですが、関節技や絞め技は柔道ではそこまで練習しないものですから、極めに行くこと自体に苦手意識を持っているようです。
また、関節技をかけたら相手を負傷させてしまうのではないか、という恐怖心があります。もちろん反復練習を行っているのですが、スパーリングの際にそれを上手に発揮できません。
その内に柔術という枠そのものに身体が慣れていくものなのでしょうか。柔道や他の格闘技を身に着けているからこそ注意すべきポイントなどを教えて頂けたら幸いです。
質問者の方のように柔道、あるいはほかの格闘技から柔術への移行に苦戦する、という人は結構多いはずです。そんなときは次のように考えましょう。
1、~だったら勝てるのに、という考えをやめる
柔術の練習中、「ちくしょー、柔道だったらこんな奴ら簡単に投げ飛ばして勝てるのによぉー」と思ったりしていませんか? 本当に勝てるのかもしれませんが、それを思ったところで何もなりません。
柔術の勝ち負けは柔術でしか付けられません。もし打撃だったら勝てる、などと言い出したら、極端な話、100メートル走だったら勝てるとか、料理だったら勝てるとか果てしなく言い訳ができてしまいます。
他の格闘技である程度の実力までいくと、柔術を白帯から初心者として始めるのは複雑な気持ちにもなるでしょう。変なプライドが邪魔したりするのかもしれません。そんなときは柔術に取り組むことは全く新しい挑戦だと思って挑みましょう。そうすれば自分が理想的な動きができないことにもフラストレーションを感じなくなります。
2、経験者の自分は強い、という気持ちを捨てて初心に戻る
運動神経の良い人や過去に何か格闘技をやっていた人が自信満々で最初の柔術のレッスンを受けたら想像以上にボコボコにされる、というのは柔術あるあるです。
僕は子供の頃に空手をやっていたことがあり、学生時代もずっとスポーツをしてきました。特に柔術と関係はないんですが、それでも一番最初に柔術の練習に行ったときは、「それなりに運動もしてきたし、俺ってそこそこできるんじゃないか」と過信してしまったものです。
結果は当然のごとく、自分よりも軽く小さな人たちにけちょんけちょんにされました。今思うと、あのとき自分のつまらない自信をへし折られて良かったと思っています。自分の弱さを認めてからじゃないと前に進めないからです。
弱いからこそ、じゃあ強くなるためにはどうしたらいいのか、と考えるところから成長が始まるんじゃないかと思うのです。そもそも初心者なんだからスパーリングのときに思い通りに動けないなんて当たり前のことなのです。今より強くなりたいなら自分を冷静に分析することから始めてみてはいかがでしょうか。
3、苦手な動きを徹底的にやる
柔道経験者の場合、寝技を練習した経験があるだけに初心になかなか戻れず、柔道と同じ戦い方をしてしまう人もいるんじゃないでしょうか。
質問者の方が、「抑え込みはできるけど、関節技ができない」というのも柔道ルールが身体に染み付いているのが原因でしょう。
あるいは自分は経験者なんだからせめて柔術でも白帯や青帯には負けたくないといった心理が成長の邪魔をしている可能性もあります。練習中の勝ち負けにこだわるばかりに思い切りがなくなり、新しい技を試すことなく、永延と自分の知っている技をしかけるだけの毎日だったりしませんか。
柔道出身の人は上からの攻撃を好む傾向があるので、本気で柔術に順応したいのであれば勝ち負けにこだわらず最初のうちは特に集中して下から戦う練習をするべきだと思います。
柔道家だけに限らず、他の格闘技から転向した人が自分で自分ことを柔術家っぽくなってきたなあと実感するのはガードワークがある程度できるようになってからじゃないでしょうか。極めを覚えるのはそれからでも遅くないと思います。そもそも基本的なことができていないうちは相手を極めるのも難しいですし。
まとめ
要約すると、自分はもっとできるはずだという過信を捨て、初心に戻って、柔術の基本から学ぶべきだ、ということです。
また、関節技をかけたら相手を負傷させてしまうんじゃないか、ということはそれほど心配するほどのことでもないと思います。相手だって極められたらタップしますし、柔術を練習している人にとってそれは日常茶飯事のことだからです。それよりも柔術家にとっては柔道家に立ち技でぶん投げられるほうがよっぽど怪我しそうで怖いと思いますよ。
練習頑張ってくださいね。