数年前にUFCのダナ・ホワイトが、「柔術は退屈だ」と発言して物議をかもしました。あの言葉は多くの柔術家を怒らせる一方である意味、柔術を知らない人、興味を持っていない人の心理をついているんじゃないかと思いました。
そしてなぜ柔術がつまらないと思われがちなのかを考えていき、そこを改善すれば柔術にもっと人気が集まるような気がします。そこでアンチにとって柔術の何がつまらないのかを理解していきましょう。
ダナ・ホワイトのインタビュー
1、そもそもルールがよく分からない
日本で文化として根付いているスポーツは、たとえやったことがなくてもおおまかなルールぐらいは知っているものです。
野球経験者じゃなくても「タッチアップ」を知っている人はたくさんいるし、柔道経験者じゃなくても「指導」を知っていても不思議じゃないです。
でもこれが柔術となると、「スイープってなぁに?」というところから話さなければなりません。単純に認知度の問題でもあるだろうけど、ぱっと見た感じで、ルールが複雑、あるいは複雑そうに見えるのが初心者にとっては障壁となってそうです。
柔術のおおまかなルールは3分で覚えられます。
しかしポイントやアドバンテイジが入るかどうか、反則かどうかの線引きって経験者からしても結構難しかったりしますよね。
2、膠着が多い
おそらくダナ・ホワイトがいう「退屈」は柔術における膠着の時間帯のことを指しているんじゃないかと想像します。
柔道だったら攻める姿勢が欠けたらすぐに「指導」が入るのに対し、柔術はマイナスアドバンテージが入りはするものの、まだまだ止まっている時間、あるいは止まっているように見える時間帯が比較的長いですよね。
あれはあれで選手からすればバチバチに頭脳を働かせたチェスマッチであり、チャンスを狙い定める時間でもあり、必死でポジションを奪う、あるいは奪われないようにしている熱戦なんだけど、それはやったことのない人にはまず伝わりません。
かといって膠着したら即退場とかのルールになったら、やたらめったら動きまくる、あまり頭のよろしくなそうな競技に見えそうで嫌ですね。必ずしも速くて強いだけが格闘技じゃないし、ときにはゆっくりと柔らかく動くのが柔術の魅力だからです。
試合中の膠着を改善するためにどうしたらいいのかは難しいところですね。ルールの改善が必要なのか、それとも今のままでやっていくのかは今後も議論されていくことでしょう。
3、動きが地味
もし初めて見た柔術の試合がアドバンテージの取り合いのような試合だったら、もしかしたら柔術に対する興味は薄れ、離れてしまうかもしれません。
柔術では多くの場合、柔道のような豪快な投げが炸裂したり、飛びつき十字のような一瞬の極め技が飛び出したりしないまま、静かに終わっていったりします。
そのくせ勝った外国人選手が大声で雄たけびをあげだり、飛び上がって喜んだりするものだから、知らない人からすると興ざめしてしまうこともあるでしょう。
確かにそこにはどうすることもできない「温度差」が存在します。競技者の熱が見ている側に伝わりにくいというのは柔術がより多くのオーディエンスを集めるための課題でもありますね。
4、男同士の密着が気持ち悪い
汗だくの男、あるいは女同士が顔と顔をくっつけて抑え込み合戦をする。後ろから相手を強く抱きしめては何分も離さない。首を絞めたり、絞められたりしては喜んでいる風景が気持ち悪いと思う人もいるようです。
実際やってみると、そんなこと考えている暇がないし、攻撃すること、あるいは守ることに必死だから、相手の汗がどうとか、顔が近くになるとかが頭によぎることはほとんどないんですけどね。
でも知らない人が見ると、そう見えてもおかしくないなとふと思うことはあります。確かにたまに相手の道着が臭かったり、髭でグリグリされたり、相手の乳首が顔のところに来たりするときはさすがにうぇーってなりますしね。
でも最近ではラッシュガードを着たり、道着をマメに洗って清潔にしている人が多いです。昔に比べたらその辺のマナーは大分改善されましたよ。だから、そんなに男同士の密着も気持ち悪いものではないんですけどね。
5、オシャレじゃない
サッカーやバスケと違って柔術をなんとなくファッションでやり始める人はまだごくわずかでしょう。一言でいうならば多くの人にそれほど「格好いい」と思われていないということです。
ファッションでやる奴なんてどうせ続きやしない。そんな奴らはこちらからお断りだと言ってしまえばそれまでですが、人か何かを始める動機って単純に格好いいかどうかだったりしますよね。特に子供や若者が心を動かされるのはそこじゃないでしょうか。
海外ではサーフィンとの融合やセレブとのコラボなどを駆使して柔術のブランディング化に成功している地域や道場も少なくないです。
その点でいうと日本ではまだまだ一部のマニアによって支えられているところがありますよね。逆に成功している道場は清潔感を保ち、オシャレな内装にして、初心者や女性も入会しやすいように敷居を下げている印象があります。今の時代、プロレス道場のようなノリでやっていたら生き残るのは難しいですからね。
6、おっさん率が高い
統計を取ったわけではないんですが、おそらく日本で柔術をやっている人の多くが30代以上の男性じゃないでしょうか?
日本のような年功序列社会において、子供や10代、20代の若者がおっさん集団の間に入っていくってかなり勇気のいるものです。
柔術ってオモシロそうだからみんなでやろうぜっていう若者が少ないのはずばり、おっさんたちと絡むのが面倒だったり、嫌なのかもしれませんね。
僕が柔術を始めた20代前半だった頃、そういえばやたらと若者に対抗心むき出しのおっさんとかいたからなぁ。人によってはあんなおっさんに出くわしたら「なんなんだこのおっさんたちは!まったくつまんねーの」と思って辞めてしまう人がいてもおかしくないですね。
断りを入れておくと、自分も今では十分おっさんの部類に入るので、世の中のおっさんたちを老害のように扱うつもりは毛頭ございません。
しかし若者のエネルギーってやっぱり侮れないものがあって、若者たちをどう取り囲んでいくか、若者たちにどうやって面白いと思われるかがますます今後の明暗を分けることになりそうです。
まとめ
以上、アンチの意見をまとめたり、想像したりしながら挙げてみました。柔術がつまらないと思われる原因はいろいろあるけど、これだけは自信を持って言えます。実際やってみたらすぐにその面白さに気づくよ!だからとにかく体験してみよう!