多くの人が勘違いしていること、それはモダン柔術のアイコンともいえる技ベリンボロを考案したのはメンデス兄弟だという説です。あるいは2009年の柔術世界選手権(ムンジアル)でサミュエル・ブラガが使ったのが初めてという説。実は両方とも間違いです。では真相はいかがなものでしょうか?
まず答えから言いましょう。ベリンボロの生みの親、それはメンデス兄弟でもなければ、サミュエル・ブラガでもなく、マルセル・フェヘイラです。それもベリンボロが生まれたのは1993年。そう、サミュエル・ブラガが世界選手権(ムンジアル)で使ったときよりもさらに16年も前のことです。
ベリンボロの生みの親マルセル・フェヘイラって何者?
マルセル・フェヘイラとはPRIDEでも活躍したムリーロ・ブスタマンチの黒帯で、もともとはカーウソン・グレイシーの下で柔術を始めた選手です。世界選手権(ムンジアル)では、1996年に青帯ミディアム級で優勝、1998年には茶帯のヘビー級で優勝している実力者です。
そんな彼は1993年、まだカーウソン・グレイシーの下で練習していたマルセル・フェヘイラは、スパーリングパートナーであったエドゥアルド・レルネルにいつもデラヒーバガードを崩されてパスされていました。
それをなんとかさせまいと、苦肉の策として取ったのが、デラヒーバガードから回転する、という動きだったのです。これが後のベリンボロとなる原型の動きが生まれた瞬間でした。
ただ、当時はまだ「ベリンボロ」という名前はなく、回転系の動きから「ヘリコプタースイープ」と呼ばれていたそうです。
その後、他にも「ヘリコプタースイープ」と呼ばれるスイープが生まれたこと、またアンドレ・ガウボンが「ベリンボロ」と命名したことや、メンデス兄弟が試合で何度も成功させたことによって、「ベリンボロ」は世界中に普及されていったのでした。
マルセル・フェヘイラは、柔術チャンネルの動画などで「ベリンボロの父」として紹介されています。
ベリンボロの意味
Berimbolo(ベリンボロ)の意味についてですが、アメリカの複数のサイトではポルトガル語のスラングで「scramble 這い登る/這い上がる」を意味する、と説明しています。
ただ、ポルトガル語には「berimbolo」という言葉は存在せず、おそらくこれはアンドレ・ガウボンによる造語だと考えられます。
また、別の説ではポルトガル語の「se embolar(ボールになる/ボールのように丸くなる)」といった意味が由来ではないかとも言われています。
いずれにしろ、今ではすっかり柔術用語として愛好家の間では普及されていますが、現在に至ってもポルトガル語のスラング辞書にも「berimbolo」という言葉は掲載されていません。
つまり柔術を知らない一般のブラジル人に「ベリンボロ」と言ったところで通じないのです。ちなみにブラジルの柔術家たちは「ベリンボロをする」というのを「berimbolar ベリンボラール」といったりするそうです。