多くの人がブラジリアン柔術を始めた頃は夢中になって一生続けたい、黒帯になるまで頑張りたいといった目標を掲げますが、実際は生活の中で様々な出来事が起こり、なかなかそうはいかなくなるものです。では人が柔術を辞める理由とは一体なんなのでしょうか。それについて考えてみました。
1、そもそも肌に合わなかった
そもそもやっていて面白くないという人が続けるのは不可能です。人によっては打撃系の格闘技のほうが好きだったり、あるいは全く別のスポーツに興味が移る人もいるでしょう。
そうした多くの選択肢の中から柔術を選ぶほうがむしろ珍しいことです。このレアな出会いに喜びを感じられる人は続けていけるのですが、肌に合わなかったらおそらく始めてから数ヶ月で辞めていくことになるでしょう。このタイプはどんな手段を打っても遅かれ早かれ辞めるはずです。
2、強くなれなかったから
相手をコントロールし、極められるときは楽しいけれど、自分がやられて負けてばかりなのはちっとも楽しくない、という人にとってはそんな期間が長く続くのは耐えられないかもしれません。
柔術に限ったことではないけれど、格闘技なら必ず最初の頃は雑巾のようにボロボロにされる下積み期間が誰にでもあるはずです。その期間に耐えられない人は道場に通うのが億劫になって辞めてしまうかもしれません。
ただ、このタイプは「1」と違って少なくとも柔術の面白さは知っている、という点においてはまだ救いがありそうです。
最初の頃だけでも白帯だったら白帯同士で、女性だったら女性同士で、年配の人だったら年配同士で、体重の軽い人だったら軽い人同士でスパーリングする、といった環境さえ整っていたら、それほど力の差に絶望感を覚えずに続けられるかもしれませんね。
3、怪我
柔術を練習していれば誰もが一度や二度は怪我をするはずです。ときには骨折などの大怪我をすることもあるかもしれません。
そこである種の恐怖を覚えたり、モチベーションが下がったりすることはよくある話です。あるいはやりたくても慢性的な痛みがあってできないという不運に見舞われる人もいます。
日常生活に支障が出るようなら辞めるのは仕方がないでしょう。一方で怪我をしたくないからといった理由で辞めるのはとてももったいないです。
怪我はウォーミングアップやストレッチをしたり、ムキにならずに冷静にスパーリングをすることで、ある程度までなら予防できるので、つまらない怪我が原因でフェードアウトしていかないためにも日々の身体のケアを忘れないでおくことが大事ですね。
4、お金
月謝が払えなくなって辞める人も少なくないはずです。特にお金のない学生が自分で月謝を払い続けるのは簡単なことではありません。
僕もお金がなくて月謝を払うのが大変だった時期があるので、それが理由で辞めていく人がいることは理解できます。しかしお金で辞めていく人は結局柔術の優先順位が低かった、ということが考えられますね。
もし本当に好きだったら月々数千円から1万円ぐらいの月謝代ならバイトをしてでも親にお金を借りるでもなんでもして工面するでしょう。
外国では柔術が一部のお金持ちしか練習できなかっりする国もあります。それに対し日本では物価や所得に対しては柔術道場の月謝はかなりリーズナブルな値段に設定されていて、生徒にとっては贅沢な環境なのです。
月謝が高いなあと思っている生徒は日本の環境にもっと感謝すべきですし、逆に先生から生徒たちに「柔術ができることは贅沢なことなんだよ」という話をするのもありだと思います。
それでも辞めてしまう人は結局はお金があろうとなかろうと長く続かないタイプなのかもしれませんね。
5、距離
東京には無数の道場がありますが、地方だとなかなか自宅や職場の近くに道場がないという人も多いはずです。僕の知り合いにも毎回車で2時間かけて練習に行く人がいます。
距離はすなわち時間やお金のロスにもつながるので、月謝を払うのがきついという問題よりもむしろこちらのほうがずっと深刻ですね。
もっと柔術がポピュラーになって田舎にもそこら中に町道場のようなものが増えればいいんですが、それまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
距離に関しては解決策を見つけるのは本当に難しそうです。柔術のためだけに引っ越すのも簡単ではないので、もし近くに道場がない人は無理して遠くまで通うよりも近所で仲間を集めてサークル的にやったほうがいい場合もあるでしょう。
ただ、さきほどの優先順位の話じゃないけれど、距離があってもやはり本当に好きな人は続けますね。世界的に有名なブラジル人選手たちの中にも昔はバスで何時間もかけて道場まで通っていた選手たちも少なくないです。
6、仕事
毎日夜遅くまで仕事があって疲れてとてもその後練習なんてできない。夜遅くに練習してしまうと睡眠時間が削られてしまう。そんな理由から練習から遠ざかってしまう人はたくさんいます。
あるいは仕事の時間と練習のスケジュールが合わずに辞めていく人もいるでしょう。特に夜型の仕事をしている人は、朝や昼に練習がしたくてもその時間帯に練習をやっている道場がほとんどないといった問題に直面します。やる気はあるし、柔術が好きなのに練習ができず、結局辞めてしまう、というもったいないケースですね。
7、人間関係
道場の先生と馬が合わなかった、ほかの生徒たちに馴染めなかった。いじめに遭った、喧嘩をした、など道場内でも色々なことがあると思います。もしそれで柔術を辞めた、あるいは辞めようと考えているなら、いっそのこと道場を移籍したほうがいいですよ。
一定期間ひとつの道場で練習に在籍していると、まるでそこが柔術の世界の全てのような気持ちになってしまうこともあるでしょう。しかしそれは違います。たとえ人間関係で苦しんでも、それは柔術が悪いんじゃなく、たまたまその環境が悪かったのです。
もし本当に柔術が好きなら人間関係なんてつまらないことで悩んでいないで、気持ち良く練習できる環境を探すべきです。それに気づかずに辞めていくのはとても悲しいですね。
8、人生の節目
子供の場合、小学校に入学するとき、学生の場合、受験が始まるタイミング、大人なら結婚や子供ができたのを機に辞めていく人たちもいます。
それも案外真面目に練習していた人に限って、人生の節目ではスパッと辞めていったりするものです。それはそれでそれぞれの人生なので仕方がないことですね。
学生時代の部活のようにある時期だけ集中して練習して燃え尽きる、というのも一つの柔術ライフです。続けられることに越したことはありませんが、柔術だけが人生じゃないので柔術を辞めること自体は決して悪いことではありません。
むしろこのタイプの人は辞めてもなお柔術をいい思い出として後々振り返ることのできる幸せな人たちですね。
まとめ
すでに柔術を辞めてしまったという人は1から8のどれかにあてはまるんじゃないでしょうか。一方で道場を経営している先生方は、生徒たちが辞めないようにするにはどうすればいいか日々頭を抱えていることでしょう。
一説によると、柔術を始めて黒帯まで続けられる人は全体の1%に過ぎないそうです。たとえ黒帯じゃなくても苦しいながらも、大変なことがあっても、なんとか続けている人は立派ですね。大いに自分を褒めていいと思いますよ。