同じ寝技でもブラジリアン柔術とグラップリングって違うの?そんな疑問を晴らすべく、両者の違いを分かりやすく説明したいと思います。
読者の方から質問を受けました。ありがとうございます。
こんにちは。僕は今、寝技に興味があって始めようかどうか迷っています。質問なんですが、柔術とグラップリングは全く別ものなんでしょうか。初心者にはどっちのほうが覚えやすいとかありますか。あとグラップリングだけの練習をしている道場ってあるんでしょうか。
では質問に答えて行きたいと思います。
そもそもグラップリングとかノーギってなに?
グラップリングという言葉はもともと組み技全般を指す言葉で、広義では柔術もその中に含まれるようです。
しかし愛好者や競技者の間で「グラップリング」といえば一般的には道着を着用しない組み技、あるいは寝技のことを指します。道着を使わないことから「ノーギ(No-Gi)」と呼ばれることもありますし、「裸」と呼ばれることもあります。
グラップリングで有名な大会といえばアブダビコンバット(ADCCサブミッション・ファイティング世界選手権/ADCC Submission Fighting World Championship)がありますね。「寝技世界一決定戦」などと謳われる大会がこれです。
他にも国際ブラジリアン柔術連盟主催が主催している世界ノーギ柔術選手権が有名ですね。ルールに違いこそあれど、どちらも道着を着用せずに戦うという意味では「グラップリング」といえるでしょう。
グラップリングは大会によってルールが大きく違う
前述のアブダビコンバットと世界ノーギ柔術選手権にはルールに大きな違いがあります。ここでは細かいルールの説明は省きますが、最も注目すべき点は足関節のヒールフックがあるかないでしょう。
ちなみにアブダビコンバットではヒールフックが認められており、世界ノーギ柔術選手権では反則となっています。
ときどき「グラップリング」と「ノーギ」を分けて使うことがありますが、それはルールの違いを指す場合がほとんどですね。ヒールフックがOKかどうかで戦い方も大分変わるので、同じ裸ルールでも大きな差が出てきます。
ルールが異なるのは何も大会だけでなく、道場によってグラップリングの練習のときにヒールフックを認めているところとそうでないところがあります。道場内のルールを知らずにヒールフックを仕掛けたりすると怒られるので注意しましょう。
ブラジリアン柔術は道着を掴めるけど、グラップリングは掴めない
柔術とグラップリングの最大の違いは掴めるかどうかにあります。柔術は相手の襟、袖、ズボンなど掴みたい放題ですが、グラップリングではラッシュガードやハーフパンツなど服の部分を掴むことは反則です。
これによって柔術でできるような道着を掴んで相手を抑え込むといった動きがグラップリングではできなくなります。もちろん十字締め、送り襟締め、ラペラチョークなど、道着を利用する締め技もできません。
掴めないせいもあってグラップリングでは膠着が比較的少なく、より動きのあるスピーディーな戦いになることが多いですね。
レスリングの技術も多く使われ、立っているときは柔道の投げより、どちらかというとタックルによるテイクダウンがよく見られます。
グラップリングは足関節の応酬になることが多々ある
道着がない分、ディフェンスするのが難しいからか、グラップリングではアキレス腱固めをはじめ、足首固め、膝十字固め、ヒールフック(ルールで認められている場合)など足関節技の応酬になることがよくあります。
足関節は腕と違って一瞬で決まってしまうことが多いほか、相手の足を取りに行くときに自分の足に隙ができやすくなり、お互いに足の取り合いになることも少なくないです。一瞬で決着が付いてしまうハラハラドキドキのあの展開はグラップリングならではといえるかもしれません。
グラップリングはチョークがスポっと極まる
グラップリングでは襟がない分、首があらわになることが多く、チョークが比較的極まりやすい傾向にあります。特にギロチンチョークやアナコンダチョークがスポっと極まることが多く、一瞬の隙をついた大逆転勝利なんてケースもありますね。
柔術でもチョークを極めることは可能だけれど、グラップリングのほうが常に警戒しなければならない緊張感があります。
それによって攻撃の仕方や防御の仕方も変わってくるので、自ずと全体の動きにも変化が出てきます。チョークを仕掛けながら隙を突いてパスガードをしたり、グラップリングならではの様々なバリエーションが生まれますね。
グラップリングは滑る
もう一つ、柔術とグラップリングの大きな違いにグラップリングでは汗をかけばかくほど体が滑りやすくなることが挙げられます。
極まりそうな場面でもツルっと脚や首が抜けたり、バックに回れそうな場面でも抑えきれなかったりして、汗のせいで相手を捕まえることが難しくなるのが特徴です。
特に汗かきの人のビチョビチョ具合といったら半端ないです。練習中にはラッシュガードやハーフパンツ、あるいはロングタイツを着用するのが当たり前ですが、人によっては何を着てても大量の汗が流れるのがグラップリングです。
そのため「他人の汗がかかるとか嫌だなあ」と思ってる潔癖の人にはおすすめできません。柔術はその点、道着が汗を吸ってくれるので臭いことはあっても、汗のしたたり具合は比較的少なくて済みます。
ブラジリアン柔術が強い人はグラップリングをやっても強い
柔術が強い人は、ノーギで戦っても大抵強いです。それはアブダビコンバットの選手たちがほとんどが柔術出身であることを見ても明らかです。
逆にグラップリング出身の人が柔術をやったら強いかというと、やはり強いとは思いますが、柔術の大きな大会でグラップリング出身の選手が結果を出したという話はあまり耳にしません。
それだけ柔術家がグラップリングルールに適応するより、グラップラーが柔術ルールに適当するほうが難しいのでしょう。
「初心者にはどっちのほうが覚えやすいのか」という質問については、一概にどちらのほうが簡単だ、あるいは難しい、といった答えはないと思います。どちらも始めるのは簡単に始められるし、強くなるにはそれなりに練習が必要です。
グラップリングはどこで練習できるの?
グラップリング専門の道場が日本にあるかどうかはちょっと分かりませんが、ヒールフックなしのノーギルールなら柔術道場で大抵練習できるはずです。
ヒールフックなしの寝技なんて寝技じゃねえ、といったこだわりのある人は、総合格闘技道場のグラップリングクラスに行けば練習できるはずです。
いすれにしても初心者ならまずは柔術から始めて、ノーギクラスを一緒に受けて、両方体験してみるのが一番いいんじゃないでしょうか。そして気に入ったほうに力を注げばいいと思います。
あるいは将来的に総合格闘技をやりたいのであればグラップリングの練習をする、道着を着て練習するのが好きなら柔術をする、といったように目的に合わせて行けばいいんじゃないでしょうか。