先生が黒帯ではなく、生徒に黒帯を授与することができない道場やサークルはまだまだ日本にはたくさんあると思います。黒帯を目指したい人はそもそもそんな道場に入るべきじゃないのか。それとも途中から移籍すればいいのか、という問題について考えてみました。
読者の方からこんな質問をいだたきました。ありがとうございます。
初めまして。柔術を習う事を検討中です。年齢も50代に差し掛かりますが、やるなら10年で黒帯を目標にしたいと思っています。幾つかのジムに問い合わせしており、気になった所があるのですが、そちらでは茶帯までしか出せないと言われました。
無謀な目標なのは理解してますが、仮に最終黒帯という段階で黒帯が欲しいので他に行くというのは気が引けます。このような場合を踏まえたジム選びのアドバイスが頂ければ幸いです。無謀な目標についての質問で恐縮ですが何卒宜しくお願いします。
では質問に答えていきます。
黒帯を出せない道場で柔術を始めることにはなんの問題もない
その昔、日本人が黒帯を取得するにはブラジルやアメリカに行くしかなかった時代がありました。
今の先生方の多くは日本で練習を積みながらもお金を貯めて何度も地球の裏側まで足を運び、現地の黒帯の先生たちに認められるようになるまで試合や練習を重ね、ようやく黒帯を巻けるようになった、という歴史があります。歴史といってもたかが10年~20年前とかの話ですよ。
つまるところ、そもそもそんな環境から始まった、あるいは最近までそんな状態だった日本柔術界において、ここの道場は黒帯がもらえないから入会しないほうがいいや、なんて言うこと自体がナンセンスなのです。
もちろん全国どこに行っても黒帯二段以上の先生に教わるのが当たり前という環境が日本中に整っているのだとしたらそうしたほうがいいのかもしれません。
でも現状少なくとも自分のいる環境がそうじゃないんだったら、そこにこだわる意味がないんじゃないでしょうか。それに今もし茶帯しか出せなくても、将来的には黒帯を出せるようになってるかもしれないしね。
そんなことよりも自分が柔術を続けられる環境を確保することが最優先で、無理なく楽しくできる環境を見つけたらいいと思いますよ。
道場を移籍することは悪いことじゃない
仮に最終黒帯という段階で黒帯が欲しいので他に行くというのは気が引けます。
最初に入った柔術道場が自分にとって最高の環境だったらいうことはないでしょう。そしてそこで理想の指導者に出会えて、自分の成長ぶりを黒帯になるまで見届けてもらえたら素敵でしょうね。
ただ、現実はほとんどの場合そうはならないです。黒帯を実際に取得した人の中で白帯から黒帯までずっと一つの道場に居続ける人って少数派なんじゃないかなぁ、と僕は思います。実際よりよい環境を求めて生徒が途中で移籍することは結構当たり前ですよ。
理由は簡単で人生にはいろんなことがあるからです。練習相手や練習量に満足いかなくなったり、道場内で揉めたり、先生の教え方に納得がいかなくなったり、引っ越ししたり、転勤になったり、結婚したり、離婚したり、と人の数ほど移籍する理由はあるでしょう。
だから移籍するのが嫌だから最初から自分にとって完璧な道場に入会したい、という考えもまたナンセンスです。一生転職したくないから完璧な会社に入りたいみたいな話です。
そんなのは実際に通ってみないと分からないし、そもそもまだ柔術を始める前から黒帯を取るときのことを心配をするなんて気が早すぎますよ。
そんなことを心配する前にまずはさっさと始めちゃいましょう。そこに悩んでる時間がもったいないです。
黒帯を目指すあなたが黒帯になれない理由
黒帯になりたいって言って入会してくる初心者に限ってだいたいすぐに辞めていきます。これ、柔術あるあるです。
なぜなら柔術をすることじゃなく、黒帯になることが目的になってるからです。おそらく黒帯になってみんなを極めまくってるところをイメージしてるんだろうけど、そんな領域に簡単に到達できるほど甘くないです。
たとえ黒帯になったとしても実際は下の帯や若者相手にひーひー言いながら戦うことになったり、自分の理想の強さとはかけ離れた現実が待っていたりします。だから黒帯に幻想なんか抱かないほうがいいです。
やるなら10年で黒帯を目標にしたいと思っています。(中略)無謀な目標なのは理解してますが、、、
黒帯を目標にするのはいいし、全然無謀な目標ではないですよ。でも始める前からすでに黒帯になったときのことを心配している時点で、おそらく質問者の方にとってはそれが目的になってるんだといえるでしょう。
柔術をやってると色々なことがありますよ。ボコられてきつかったり、怪我したり、それでもやっぱり好きな人は長く続けます。練習していないとうずうずしてきて、どうしようもなくなるような人が生き残ります。
長年そんな状態が続いた結果、黒帯になれるんであって別にそこがゴールじゃないんですよ。
だからそんなこといつまでも考えてないで、もうちゃちゃと始めちゃいましょうよ。人生は短いんだし、問い合わせなんてしてる場合じゃないから。
まずは練習を始めて、一定のペースで続けて青帯を目指さないと。黒帯なんてもっとずっと先の話ですよ。