帯や昇段がある格闘技において黒帯を取る、というのはひとつの名誉であり、多くの人の目標です。ブラジリアン柔術では始めてから一体どのくらいの期間で黒帯になれるのでしょうか。様々な事例を見ながら考えていきましょう。
ブラジリアン柔術で黒帯になるために必要な期間って?
現在の日本ブラジリアン柔術連盟の規定では、黒帯を取得できる資格は19歳からで、青帯から紫帯が2年、紫帯から茶帯が1年6ヶ月、茶帯から黒帯が1年が最短修了期間とされています。
白帯から青帯の最短期間は設けられていないことから、その期間を少なく見積もって半年とした場合、早ければ5年程度で黒帯を取得できることになります。ちなみに金古一朗選手は29歳で柔術を始め5年で黒帯を取得したそうです。
もちろんその人の練習量、実力、知識などによって大きく変わります。これはなにも黒帯に限ったことではありません。
ちなみに僕の場合は柔術を始めてから10年で黒帯を先生からいただきました。練習量は多少変化はあるものの、おおよそ週に3回の練習を10年間保ってきました。
その間、怪我などで数ヶ月練習できないこともありましたが、3ヶ月以上の長期離脱は一度もありません。つまりバリバリの選手ではなく、一般の会員でも週に数回の練習をこつこつ続けていけば、「10年」ほどで黒帯になれる可能性があるということです。
最短でブラジリアン柔術の黒帯になった事例
極端な例を挙げると、柔術をほとんど練習したことがなくても、黒帯になった人たちはいます。MMAの選手たちがそれに当たります。
MMAの選手によってはノーギのみの練習をやるだけで、胴着を着てやる柔術の練習を一切しないという人も少なくないです。そういう人たちは強くなっても帯が上がっていくことはありません。
それでも実力は十分なので選手によっては黒帯を認められる人もいます。これまでほとんど柔術を練習せずに黒帯を取得したMMAファイターは以下の通りです。
1、桜庭和志
グレイシーハンターこと桜庭和志のキャッチレスリングやグラップリングの腕前はいまさらいう必要ありません。そんな彼がブラジルのシュート・ボクセに練習しに行った際、MMAファイターでもあり柔術の指導者でもあるクリスティアーノ・マルセロから名誉黒帯を受けています。
2、ジョシュ・バーネット
キャッチレスラー、プロレスラー、MMAファイターと様々な肩書きを持つジョシュは、元修斗の選手であり、CSWトレーニングセンターなどのオーナーでもあるエリック・パーソンから柔術の黒帯を授かっています。ちなみにジョシュは一度も柔術着の袖に腕を通したことがないそうです。
3、ラシャド・エヴァンス
元UFC・ライトヘビー級王者のラシャド・エヴァンスは、ホーレス・グレイシーからUFC109の出場を前にして黒帯をもらっています。シャド・エヴァンスもまた柔術胴着を一度も使ったことがないそうです。
柔術黒帯取得方法についての賛否
上に挙げたようなMMAファイターだけでなく、道場によってはオンラインレッスンによる黒帯取得を許可しているところもあるほか、以前は「3年間で柔術黒帯になれるプログラム」といった最短コースを売りにしている道場もありました。
そうした方針はあくまでも道場主や柔術クラスのインストラクターが決めることですが、やはり反対の意見も少なくありません。
どれだけグラップリングを練習してきたからといって、柔術を練習してもないのに黒帯をあげるのはどういうことか。両者は全く別の種目ではないのか。オンラインレッスンでどうやって実力を証明するのか。決められた期間で誰もが黒帯になれるはずがない。といった批判はとまりません。
道場主やインストラクター側の視点で見ると、例えば著名なMMAファイターに黒帯を与えることは、指導者として箔がつく、と考える人もいるようです。
それに対してオンラインレッスンによる黒帯の授与は、やはりビジネス拡大を狙えるという側面が大きいでしょう。一定の期間で黒帯になれるコースについては、5年なら5年といったゴールを定めたほうが練習生にとっては何も考えずに続けやすい、といった利点があるのかもしれません。
黒帯を取るのは早ければいいってもんじゃない
僕は柔術を始めた当初は紫帯になれればそれで十分だと思っていました。白帯のときの紫帯といえばそれこそ神のように強かったからです。
正直当初の目標はそれほど高いものではありませんでした。だから黒帯になりたいともなれるとも思ってませんでした。
しかしいざ自分が紫帯になったときに、自分の実力が白帯時代に想像していたものとはかけ離れていることに気がついたのです。
紫帯が取れたら辞めてもいいぐらいに思っていた気持ちはすぐに変わり、まだまだ上達できると思って練習を続けてきました。
そしてやがて黒帯になったのですが、今でも昔想像していた黒帯のイメージと自分の実力が合致したとは思っていません。むしろ日々自分の実力の至らなさを思い知らされる毎日です。
ただし、ゆっくり時間をかけて階段を上がってきただけに、幸い大きな怪我もなく、今後もまだまだ練習が続けられそうです。
人によっては長年のハードな練習や試合によって腰や膝を悪くし、せっかく黒帯を取っても体がいうことを効かず辞めていく人もいます。また、ストイックにやりすぎて燃え尽きて、モチベーションを失ってしまう人もいます。
柔術人生は人それぞれなのでどれが一番いいというのはありません。燃え尽きてスパッとやめるのも哲学だし、のんびりに高齢になるまでやるのもポリシーです。
ただ、一概に早く強くなること、早く黒帯になることだけが、柔術ライフではないということを忘れないでもらいたいです。