誰もが理想的な環境で柔術を練習したいと思うのが普通ですが、地域や場所によってはなかなか実現しないものです。その理由の一つが指導者不足。特にちゃんと教えることができる先生がいない、というのは深刻な問題ですね。そこでそんな状況にいる人のために3つのアドバイスを送りたいと思います。
読者の方からこんな悩み相談がありました。ありがとうございます。
私が通っている道場は、柔術の黒帯の講師が一人おり、クラスの指導をしております。私が青帯になり柔術とはどういうものかが分かりかけて来たのか、講師の指導力不足を感じるようになってしまいました。
具体的に言うと、教えてもらう技は、一つの技のみで、前後の動きや技と技の連携等、つなぎの指導はありません。また、一つの技のディテールの説明が無い為、わかっている人や運動神経の良い人のみがその技が出来て、他の人は習得できません。(例えばXガードから、相手の脚を担いで柔術立ちでたちあがのスイープとか)。
おそらく、講師は大柄で筋肉が発達している方のため、技に頼らず、剛力で柔術できるタイプなのだと思います。
平たく教えてるのかもしれませんが、ディテールや、前後の動き、技の連携を聞いても「???」という感じです。
顔を潰さない為にも「へぇー」と気を使っていますが、できれば技の知識に詳しい人に教わりたいのです。その道場に通う理由は、広い場所の提供とスパーの相手がいるという状況とのみ。。。。。思っています。どこのジムや道場もこういう物なのでしょうか。このテーマでブログを執筆いただけるとうれしいです。
これはとても切実な問題ですね。最近ではどこの道場でも黒帯の指導者がいるのが当たり前になりました。かといってどの黒帯も教え方が上手いわけではありません。
そもそも柔術が強いというのと、教え方が上手いというのでは全く意味が違うからです。そんなとき僕なら次のようなことを考えます。
1、移籍する
生徒がよりよい柔術の環境を求めるのは自然の成り行きです。もっと強くなりたいから、もっといいスパーリングがしたいから、といった理由で移籍することは決して悪いことではありません。
ただ、日本中を探しても完璧な道場はまず見つからないでしょう。不満が出る度に道場を移籍していたのではキリがないです。値段、場所、生徒数、指導者、道場の広さなど、様々な要素を比較してよく考えてから決めるべきです。
質問者さんの場合、広い場所とスパーリングの相手には不自由していないそうですが、日本においてそれはとても恵まれている環境といえます。地域によってはいつもスパーリング相手が一人か二人ぐらいしか集まらない道場もあります。
スパーリング中ほかのペアとすぐにぶつかってしまい、思い切り動けないような狭い道場もあります。そんな場所ではモチベーションを保つのも大変だったりしますね。
それでもその道場に通うのはなにかしらのメリットがあるからでしょう。いずれにしろ道場移籍については様々な条件を基に冷静に考えることですね。
こちらの記事も参考にしてみてください。
2、自分で考えながらやる
それほど遠くない一昔前までは日本の柔術道場では青帯や紫帯が指導するということが当たり前でした。今黒帯の人たちはみんなそういう環境の中で切磋琢磨して強くなっていったのです。
つまり指導者が教えるのが下手だから、強くなれないということではありません。自分で考えてやればいいのです。特に最近では書籍、動画、セミナー、オンライン講座など道場以外でも勉強できるツールが溢れています。
一昔前まではこれらのうちのほとんどが存在しませんでした。ユーチューブもなかったし、今のように有名選手のセミナーを受けられる機会も稀でしたし、あるとすれば高専柔道や柔道の寝技の書籍ぐらいでした。それでも選手たちは少ない情報からできるだけの知識を吸収しようと必死だった時代です。
もちろん先生の指導が上手いに越したことはありません。ただ、先生に教えてもらわないと覚えられないといった受身の姿勢ではいつまで経っても強くはならないでしょう。それはどの競技やスポーツにも言えるはずです。
そもそも「技」というのは一つの体系、スタイルでしかなく、答えは一つではありません。先生が一つの基本動作を教えたら、生徒たちはそれを自分の身体に最適な動きに改良していくべきです。どんな有名選手が教える技でも微妙に教え方ややり方が違うのはそのせいです。
質問者の方は「運動神経のいい人のみが技を習得できている」と言っていますが、運動神経のいい人ではなく、自分で考えながら、実際に色々試してみて試行錯誤しながら練習している人が習得できているのです。
3、ほかの生徒に聞いてみる
道場内ではクラスを担当している人だけが先生ではありません。それぞれがそれぞれの得意技を持っているはずなので、そういった一人一人があなたの先生になりえます。練習のときにはもっと積極的に質問していきましょう。
その際、帯の色は関係ありません。上の帯であろうが、下の帯であろうが恥ずかしがらず分からないことはどんどん聞いていけばいいのです。
知らないスイープで倒されたらどうやったのかを聞く。いつも極められてしまう絞め技があれば、どのように絞めているのか、どのようにして防御すればいいのかを尋ねましょう。もし先生の前で聞くのは気が引けるというのなら練習後に質問するのもいいでしょう。
まとめ
生徒が指導者に不満を持つのは決して珍しいことじゃないです。おそらく多くの人が質問者の気持ちが分かるんじゃないでしょうか。
ただし、どんなに素晴らしい先生の下で練習したところで、その先生のように技が習得できるのか、強くなれるのかといったら別問題で、やっぱり最後は自分がやるかやらないかだけだと思います。
そういったことを踏まえてこれからの柔術人生のためにも自分の最善の選択をしてみてください。